統計物理学研究室

研究紹介

根本・奥田グループ

スピングラスとフラストレート系

規則正しく並んだイジングスピン(↑と↓しか向きが取れないスピン)の集まりを考えたとき、隣のスピンを同じ向きに揃えようとする相互作用が働いてる場合、ある温度以下では多くのスピンは同じ向きに揃ってしまいます。隣のスピンを逆向きに揃えようとする相互作用が働いてる場合、ある温度以下ではスピンは↑↓↑↓・・・上向きと下向きを交互に取るようなスピン配位になります。どちらの場合も高温では熱ゆらぎの効果が支配的でスピンは一つのスピン配位に落ち着くことができません。さて、同じ向きに揃えようとする相互作用と逆向きに揃えようとする相互作用がごちゃまぜにある場合、スピンはどのような振る舞いを見せるでしょうか?

非線形動力学、特に、結合振動子系についての研究

ここでいう振動子はエネルギーの注入と散逸のバランスのもとに現れる非線形振動子で、物理系のみならず化学反応系や生物の体内時計、神経回路網など自然界に広く存在している。このような振動子は一般に他の振動子と相互作用しており、その結果として、集団同期やカオスなど複雑な現象が現れる。これらの現象を理解するために、簡単な数理モデルの解析や数値実験などの方法を用いた理論的研究を行っている。

複雑ネットワーク上の相転移現象

複雑ネットワークとは

私達が住むこの世界には、WWW(World Wide Web)や友人関係、食物連鎖など様々なネットワークが存在しています。これらのネットワークの構造は、従来の物理学で扱われてきた格子のような均一構造ではないことは明らかです。近年、このような複雑なネットワークの構造に対する関心が高まっています。現実の複雑なネットワークには、スケールフリー性・クラスター性・スモールワールド性などの、いくつかの共通した性質があることが分かってきています。私達の目的の1つは、これらの性質を再現するような数学的なモデルを作成することです。ネットワークへの数学的アプローチは、数学の分野ではグラフ理論により古くからなされていました。最近では、WWWなどの大規模なデータ収集が可能なネットワークの出現が、モデル作成の大きな助けになっています。さらに、もう一つの目的は、モデル化したネットワーク上で起きる様々なダイナミクスについて調べることです。ランダムウォークや、パーコレーション(浸透現象)、Spin Systemなど、従来物理の分野で研究されてきた現象が、ネットワーク上では従来とは異なった振る舞いを見せることが指摘されています。私達は、統計力学の手法を生かし、様々なダイナミクスについて解析を進めています。

複雑ネットワーク上の相転移現象

磁性体のスピンモデルやパーコレーション理論などの相転移を伴う現象を考える時、一般には2次元正方格子や3次元立方格子などの、各頂点が規則的に並んだいわゆる”格子”を思い浮かべますが、各頂点が不均一な繋がりをした”ネットワーク”で転移を伴う現象を考えることもできます。ある種の構造を持ったネットワークでは、格子系の、無秩序相から転移点を境に秩序相へと相転移するシナリオではなく、無秩序相と秩序相の間に中間的な相(臨界相)が現れるような転移を起こす事が知られています。しかし、その臨界相での振る舞いについてはあまり研究がされていません。そこで、臨界相の現れるネットワークで、かつ厳密解を解析的に求めることの出来るモデルとして階層格子上のパーコレーションを考え、臨界相での系の振る舞いを調べています。

研究室ウェブサイト(旧 物性理論I研究室)

北グループ

我々が扱う物理系は,1023個という莫大な数の粒子が集まった系です。このような系では,一粒子あるいは少数粒子の系では考えられない現象が起こります。身近な例では,水は0℃近傍で液体から固体,あるいは固体から液体に変化(相転移)し,その前後で全く異なる性質を示します。このような相転移の例は,金属中電子などの微視的世界から宇宙スケールの現象にわたって数多く見られ,現代物理学の中心的な研究テーマの一つとなっています。我々の研究室では,このような多粒子系特有の物理現象,特に磁性や超伝導・超流動など,量子力学に従う多粒子系の示す現象を理論的に研究しています。

ボーズ-アインシュタイン凝縮

同一粒子の集団は,その統計性により,フェルミ粒子系とボーズ粒子系に分類されます。両者は,量子効果が重要になる極低温において,全く異なる性質を示します。ボーズ粒子は,大きさが整数 (0, 1, 2,・・・) のスピンを持ち,同一の量子状態に複数個の粒子を入れることが可能です。この同種ボーズ粒子系から成る系では,ある凝縮温度 T0 以下の温度 T < T0 で最低エネルギー状態をマクロな数の粒子が占有し,位相が揃ったコヒーレントな凝縮相を形成します。相互作用のあるボーズ・アインシュタイン凝縮相を,場の量子論的手法を用いて研究しています。

超伝導

電気が抵抗なく流れるという顕著な性質をもつ超伝導状態は,莫大な数の粒子がクーパー対という同じ二粒子束縛状態に落ち込むことにより生じ,基礎物理学の観点や応用面からも重要な研究テーマとなっています。その超伝導体には,磁場が侵入できない第一種超伝導体と,磁場の侵入が量子化された渦糸を伴って起こる第二種超伝導体があります。第二種超伝導体の渦糸状態は,渦の量子化,渦糸の格子形成・液体化などの面白い性質を示し,また大電流輸送や高磁場発生などの実用的観点からも重要です。

非平衡統計力学

膨張する宇宙,星の内部に存在する温度勾配,あるいは地球上における雲の形成や台風の発生など,自然界は,エネルギーや運動量の流れがある「非平衡現象」や,様々な「パターン」および「秩序」に満ちています。このような系を扱う統計力学的手法は未だに確立されていない,と思っている方も多いかと思います。しかし,場の量子論的手法を用いると,非平衡現象を扱うことに原理的な問題はなく,平衡状態と同様な考察が可能なのです。

研究室ウェブサイト(北グループ)

速水グループ

物質科学の魅力の1つは、組み合わせる元素の種類や組成比、結晶構造の違いによって、磁性や超伝導、誘電性などの異なる物性が現れる多様性です。その中でも強相関電子系では、固体中の電子同士が互いのクーロン反発力の影響を強く受けることにより、電荷の自由度だけではなく、スピンや軌道の自由度といった他の内部自由度が重要な役割を果たすようになります。これらの内部自由度は、スピン軌道相互作用や結晶構造の歪みといった様々な要素を通じて絡み合うことによって、通常の金属や半導体では考えられない面白い性質を生み出します。
我々の研究室では、こうした強相関電子系が示す多彩で魅力的な物性現象を理解するうえで重要な要素を最小限だけ取り入れたモデルに対して、量子統計力学に基づいた理論解析と数値シミュレーションを相補的に用いた研究を行っています。研究を通して、これまでにない新しい量子状態や物性現象の発見・理解といった基礎物理の開拓に留まらず、次世代のテクノロジーの理論的な基盤を提供することを目指しています。
興味をもっている最近の研究テーマとしては以下のものがあります。

  • ミクロな多極子に基づいた電子物性表現論の構築
  • 電気・磁気・弾性・熱・光自由度間にまたがる新しいマルチフェロイクス概念の提案
  • 新奇電子秩序相、超伝導相の機構解明と理解
  • トポロジーと磁性の絡み合いにより創出されるトポロジカルスピン秩序:スキルミオン・ヘッジホッグ・メロン
  • 反強磁性スピントロニクスの実現に向けた機能物性開拓
  • 機械学習を用いた効率的物性探索
  • 第一原理バンド計算を用いた現実物性の定量的解析
  • 実験で観測される非自明な電子相および物性現象の機構解明

研究室ウェブサイト(速水グループ)

所属教員

業績・年次報告

業績 年次報告
2011年度
2012年度
2013年度
2014年度
2015年度
2016年度
2011年度
2012年度
2013年度
2014年度
2015年度
2016年度

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