多は異なり “More is different”

多体として集まったとき、1個1個の性質とはまったく別の性質が現れることがあります。例えば超伝導は、多数の電子が相互作用しスピンを打ち消し合い、量子力学的な波の位相が揃う現象です。これは、電子1個の性質を調べても見えてきません。電子が多数集まってはじめて見られる振る舞いなのです。

かつて、物質は分子で構成され、分子は原子で構成され、原子は原子核と電子で構成され、というように分解された構成要素を追求していけば、すべての自然現象が理解できると考えられていました。これを“還元主義”と言います。

現実の自然現象を前にしたとき、この考えには限界があり、多体になったとき質的に異なる普遍性が見つかり、複雑系、カオス理論、確率論、マクロ系といった物理学の新たな潮流が生まれました。