奇核形状の相転移の微視的記述に初めて成功~重元素合成メカニズム解明への貢献に期待~(理学研究院 物理学部門:准教授 野村昂亮)

2025-10-02

北海道大学大学院理学研究院の野村昂亮准教授らの研究グループは、微視的な核構造理論に基づいて、奇数個の核子数を持つ原子核・奇核の分光学的性質を計算するための新しい理論的手法を提唱しました。原子核の形状は核子数の増減に伴って変化しますが、急激に変化する場合があり、形状の相転移と呼ばれます。奇核における形状相転移を、現象論的な補正を加えることなしに再現することに初めて成功しました。本研究は、あらゆる核種の構造をミクロな理論に基づいて記述するための包括的な枠組みの構築を目指しており、今後は、宇宙初期における元素合成過程で重要な核変換や基本対称性の検証に関わる核崩壊の理論的予言への応用が期待されます。

陽子または中性子の数が奇数である奇核は、陽子数・中性子数ともに偶数の偶偶核をコアとし、それとペアに組んでいない独立な核子との結合を考えることで理解される。コアが球対称な場合と、楕円体変形して回転する場合があり、核子数の増減に伴ってそれらの間で形状の相転移と呼ばれる急激な遷移が起きる。ミクロな理論に基づき、奇核における形状相転移を再現することに初めて成功した。

 

論文名:Microscopic determination of the interacting boson-fermion model Hamiltonian from the nuclear energy density functional(原子核密度汎関数法を用いた相互作用するボソン・フェルミオン模型ハミルトニアンの微視的決定)
DOI:10.1016/j.physletb.2025.139880

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