最古の銅酸化物で新しい超伝導状態が実現〜反強磁性と超伝導の⼆⾯性を併せ持つ銅酸化物⾼温超伝導の新展開に期待〜

2025-09-01

北海道⼤学⼤学院理学研究院の井原慶彦講師、⼩⽥ 研招へい教員、京都⼤学⼤学院理学研究科の
⽯⽥憲⼆教授らの研究グループは、銅酸化物⾼温超伝導体の⺟物質として最も古くから知られている
反強磁性絶縁体 La2CuO4 に対して、微量の酸素をドープすることで、超伝導転移温度が 32 ケル
ビンに達する超伝導状態を発現させることに成功しました。これまでの銅酸化物⾼温超伝導体では、
La を Sr や Ba に元素置換することで反強磁性秩序を抑制し、超伝導を発現させていました。ところ
が、本研究で実現した微量酸素ドープでは反強磁性秩序がほとんど抑制されず、低温で超伝導状態と
共存することが明らかになりました。反強磁性と共存する超伝導状態は、多層型銅酸化物超伝導体や
鉄系超伝導体などで報告されていますが、伝導キャリアのほぼすべてが反強磁性に寄与するネ
ール状態での超伝導はこれまで報告例はありませんでした。反強磁性と超伝導という⼆つの状態を
同時に実現する銅酸化物⾼温超伝導の「⼆⾯性」が明らかになり、新たな研究展開の可能性が期待さ
れます。

詳しくはプレスリリースを参照してください。

わずかに酸素をドープした単層型銅酸化物La2CuO4+δで、ネール状態と超伝導状態の共存状態が見つかった。CuO2層上で広がりを持つ伝導キャリア(青丸)が作る超伝導状態と、Cuに局在する磁気モーメント(赤矢印)が作るネール状態は、本来は水と油のように相容れない状態である。対立する性質が融和した斬新な共存状態が、最古の銅酸化物で実現していたことが分かった。